2005-01-07
_ [本] 別宮暖朗「軍事のイロハ」並木書房
正月に読んでいた本。軍事と外交を感情論を交えず冷静に見るための基本を丁寧に説明してくれている。他の本を読むときの基準となる良書だと思う。以下はホンの一部の要約。
・19世紀以降、戦争を担ったのは国軍である。国軍を動かすには大量の手続きがいるため「戦争計画」と「作戦計画」が必要。
・「戦争計画」は動員、集中、開進までを含み、国境を越えて作戦を行う「作戦計画」を含まないのが普通。
・「作戦計画」にもとづいて兵が国境を越えることで戦争が始まる。動員、集中、開進がすなわち戦争を意味することはない。
・第1次世界大戦は、「戦争計画」と「作戦計画」が一体となったシュリーフェンプランの暴走によって起こり、太平洋戦争の開戦原因は真珠湾攻撃を含む南方作戦計画の暴走にある。両作戦ともあるシグナルによって自動的に発動し、発動すれば途中で止められず作戦計画まで実行される。シュリーフェンプランでは「ロシア総動員」が、南方作戦計画では「日米交渉決裂」がそのシグナルであった。ただし、開戦の原因は計画に内在する論理によるものであって、シグナルそのものにはない。
・侵略とは「作戦計画」をもって先制攻撃を行うこと。侵略の定義は、軍事条約締結のさいの用語として必要であった。集団安全保障条項では、同盟国が侵略を受ければ参戦義務が生じるが、同盟国が侵略を行った場合には参戦義務がない。このため侵略の定義が重要なのであって、元来政治的な意味はない。
・今回のイラク戦争の開戦原因はアメリカによる侵略。ただし「人道介入」「テロへの反撃」の要素がある。問題はアメリカの侵略が国際法上許されるかどうかにある。国連は関係なく、G5プラスロシアの決定が重要。結局は程度問題であり、解決のためのコストが許容できるかどうかによる。ただ、ラムズフェルド戦略によりコストは下がってきている。
・社会の仕組み、貧困、国民性が戦争を引き起こすというのは誤り。戦争が社会の仕組みを変えたり、貧困を生んだり、国民性を形づくるのであって、その逆ではない。
・戦争で多く死ぬのは「弱い人々」ではなく「屈強な男子若者」。
・5回の社会主義者による大量虐殺事件だけで、世界大戦の戦没者を上回る。
・平和運動は、戦争の発生を促しかねない危険な政治運動である。
・日本が国連活動に参加することは「平和」に役立たない。
・戦争を起こさないためには先制攻撃をさせないこと。
READMEと日記の書き方
Rumsfeld戦略ってなんだ?
ハイテク兵器を使用し短期決戦により戦争を勝利に導く方法のこと、だそうだ。
別宮暖朗とは又渋い。日本の場合、単に技術論にとどまらない軍事の研究者は在野に在るのだよね。因みにラムちゃんの方式は正面戦争には有効なんだけど、ゲリラ戦にはお手上げなんだよね。占領統治は人手が要るんだ。ラムちゃんは陸軍の増員を主張した歩兵出身のシンセキ将軍(日系人)の首を切ってまで自分のやり方を通したんだよね。で、結果はこれ。<br><br>おそらく降伏後の日本の占領統治が米国人に誤った成功体験を与えたんだろう。あれは極めて特殊な例だということが分かってなかったんだ。おいらの日記でも書いたけど、<br><br>( http://mixi.jp/view_diary.pl?id=5502211 )<br><br>日本人が綺麗な戦争をする人間だからああいう運びになっただけなんだよね。決して米国の自由と民主主義に感動して奴らの統治を受けいれたわけじゃない。そもそも戦前から自由も民主主義も他の先進国並みにあったんだし。<br><br>米国はその単純な価値観故に成功し、単純な価値観故に国際的な失敗を重ねて没落するだろう。
今回のイラク戦争の主目的はフセイン政権の打倒にあったようですからその意味では成功したといってよさそうです。米英軍の月あたり戦死者数も減ってませんし、まだ難しい状況が続きそうですね。あ、2個目のツッコミは本筋と関係が薄く、私と面識のない個人の話なので隠させていただきました。
> 今回のイラク戦争の主目的はフセイン政権の打倒にあったようですからその意味では成功したといってよさそうです。<br><br>目的の設定は間違っていたよね。それですまなかったから。<br><br>> あ、2個目のツッコミは本筋と関係が薄く、私と面識のない個人の話なので隠させていただきました。<br><br>おお、こりゃ失礼。以後気をつけます。
アメリカの単純な価値観って利潤の拡大ということですか?つまり、世界第2の産油国の利権をフランスからもぎとるというのが勝利条件で、自由とか民主化とかをまともに聞いてる人はいないでしょう。
しかし、イラクの石油利権で、本当に莫大な戦費や人的損失をまかなえるのかねえ。アメリカにとっては大損のようにも見えるけど。もっとも中には利に聡い高官もいるようですが、アメリカにとって見れば売国的なのではなかろうか。
あずま:<br>アメリカの単純な価値観って利潤の拡大ということですか?<br> <br>自由と民主主義とキリスト教が万能薬だと信じている連中が多そうに見えるのだがどうだろう?<br><br>とよだ:<br>しかし、イラクの石油利権で、本当に莫大な戦費や人的損失をまかなえるのかねえ。<br><br>たしか一月一兆円とか聞いたことあるけど、本当かなあ。<br>イラクがアルカイーダに支配されるのは欧州にとってもまずいはず。最終的にはアメリカに協力せざるを得ないのでは?<br><br>> もっとも中には利に聡い高官もいるようですが、アメリカにとって見れば売国的なのではなかろうか。<br><br>間違いなく売国奴でしょう。ところで、ここで話していても良いの?もしあれならおいらのページで続けても良いけど。
税金使ってやることと個人のポケットに入るものとは違いますし。
大統領選をみると政府プロパガンダを信じているか利権を持っている人たちが投票権行使した人の半数ちかくいると思われますね。<br><br>人的損失はともかく、戦費って軍需への公共投資だからアメリカ経済としては損失じゃなくて貨幣流通量が増えるだけに思えます。実体経済成長が追いつかないとインフレ+ドル安が起きて投資のドル離れが痛手でしょうけど。<br><br>アレならくめさんとこで話題振ってください。
で、よしきの見方は。<br>そういえば神戸の友人が"Hegemony or Survival-- America's Quest for Global Dominance"(Noam Chomsky)というペイパーバックを読んでた。
流れぶった切って元記事にレスすると、本は読んでいないのですが、客観的事実と政治を混ぜて語っている時点で十分に冷静じゃないような気がしますが・・・
続けてもらっても問題ないすよ。こんなにツッコミくるとは思ってなかったけど。<br>ならずもの指導者を倒したら、別のならずものが指導者になったってのはどこも避けたいでしょうね。親アメリカでなくともまともな政権がイラクにできると良いのですが。<br>戦費が軍需への公共投資なのはそうなんだけどやっぱ赤字は確実に増えてるよね。ドル暴落とかになると日本もかなり困るんだけど。<br>ちなみに元記事の要約はいろんな章からの恣意的な抜出しで順番も変えてますのでごちゃ混ぜな印象になってますが、本は冷静で誠実ですよ。一見扇動的に見えるかもしれませんが、史実に基いて納得のいくように書かれてますから一読をお勧めします。
> ならずもの指導者を倒したら、別のならずものが指導者になったってのはどこも避けたいでしょうね。<br><br>いや、治安を維持できて外国に尻尾を振るのであれば、もうならずものでも構わないのでは?今でもフセインが生きているのは…考えすぎだよな。<br><br>> ドル暴落とかになると日本もかなり困るんだけど。<br><br>困るのは日本だけではないよ。<br><br>別宮暖朗氏と兵頭二十八先生との書簡のやりとりがネットにあったような気がする。お二人とも天晴れな学匠ぶりだったと記憶している。軍事を論じるにはまず教養が必要なんだよな。軍事=兵器、ではないしね。
イラクから逃げられるなら振り出しに戻ってもよいという考えはなさそうに思います。4年あるからじっくりやるんじゃないですかね。
う〜ん、金が続くのかなあ。民主化に拘る限り失敗するような気がするなあ。とりあえず国連に尻拭いさせたりクルド人と手を組んだりするんだろうか?油田のあるところだけ囲い込んじゃうとか…マジどうすりゃ良いんだろう?<br><br>それはそうと花粉症大変そうだねえ。
パイプラインは長すぎて完全に守るのは無理という話をどこかで聞いたような気が。月末の選挙に向けてまたテロが増えてきているみたいですが、サマワの自衛隊が心配ですね。
今のところ信管を抜いた爆弾が目立つように置いてあったりするだけだから自衛隊に対しては警告されている段階だね。<br><br>実は一番危険なのは遠隔操作で爆破される路上の爆弾らしいので、引き篭もっているのが一番大事かも。<br><br>政府も一応地主に対して「自衛隊を守ります」という誓約書を書かせたりしているらしい。まあ、成功報酬のようなものだろう。このやりかたは多分正しいんじゃないかな。<br><br>占領地を統治するためには敵国民の協力が不可欠で、占領軍と言えども協力を得るためには彼らの論理に従わざるを得ない。イギリスはその点で実に狡猾だった。単純な価値観で動いている米国はこういう狡猾さを身につけられるのだろうか?<br><br>あ、それからあずまととよだが紹介してくれた本は興味があります。また良い本があったら教えてください。おいらの未読リストの中ではスイス政府の『民間防衛』がダントツで良さそう。これは単なるマニュアルの域を遙かに超えています。正直、人を感動させる文章です。